本日、快晴。

空は澄んだ青。そこへ浮かぶ雲は真白。
その絶妙なコントラストを、太陽が光で更に彩り
目に痛いほどの、鮮やかな風景を創り出す。

こんな日に室内に居たら勿体無い、と
青い顔で問題集を眺めていた彼女に誘われて

相棒と三人(正確には二人と一匹)で外へ飛び出した。









2人ドライブ








「んっあー!気持ち良い!!」


青空の下、関節を鳴らしながら大きく伸びをする。
彼女の口から漏れた喜びに賛同するように、その足元に佇む相棒も
鼻を鳴らす。それに気付いたは、小さく笑みを浮かべ
先ほどとは反対に今度は体を屈めると


「お前もそう思うのかー。」


桃色の仔豚の頭をそっと撫ぜた。
それに気持ち良さそうに目を細める相棒。その尾は、パタパタと小さな音を立てて
揺れている。気のせいかもしれないが、絶対こいつは飼い主の俺より、の方が
好きなんじゃないか?


「やっぱりさ、こんな良い天気の日に勉強なんて勿体無いよね。」

「そうだな。」


縁側に座り、そんな二人(一人と一匹)を眺めていた俺の元に
相棒を抱き上げたがやって来て、隣に腰を下ろす。
その際に上がった「よっこいしょ。」と言う、年寄り臭い掛け声に笑い声を漏らすと、
は微かに眉を潜め


「ちょっと今のは失礼じゃない?!」


言いながら、俺の頬を軽く抓る。力の入っていない、戯れのそれは痛いどころか逆に擽ったくて。
浮かんだ笑みも、自然と深くなる。すると、それにつられてか
の表情も、次第にしかめっ面から笑顔に変わり、頬を抓んでいた指先は開かれて、そっと輪郭をなぞる。
その柔らかな所作に誘われるように、彼女の方へ体を傾ければ、意図を汲み取ったように
の瞼がゆっくりと落ちる。
しかし、その途中、(豚のくせに)明らかに俺にガンを飛ばしてる相棒と目が合い、
行為は未遂に終わってしまう。

・・・・・・お前、何か今日はやけに生意気だな。

少しだけ害された、気分。無意識に寄った、眉間の皺を見てが小さく噴き出す。


「あっははは!邪魔されちゃったねー。」


愉快そうな。バツの悪い表情の俺。満足そうな顔をした相棒。
まさに三者三様。

鬱屈が溜まっているわけじゃ無いけれど
あの雰囲気で中途半端に終われば、流石に気分も沈む。
事の原因。桃色の相棒を項垂れて、視界に掛かる前髪の隙間から見やれば
それは楽しそうに、実に嬉しそうに、にじゃれ付いていた。

この様子だと、どうせこの先も邪魔されるんだろう。
考えただけで、漏れるため息。
それならば、もう諦めていっそ部屋に戻ろうか、なんて考えた瞬間。


「よし、知念!ドライブ行こう、ドライブ!!」

「は?」


が得意気な笑みで、手を叩く。
突然の事に理解が出来ず(腕の中の相棒も驚いた顔をしてる)、間抜けた声を返せば、
はニッと口角を上げて玄関の方を指差す。
その先を見やれば、そこには見慣れた赤いママチャリ。
…チャリでドライブ?


「よっしゃ!行くぞー!!ほれ、立たんかい!!!」


叫ぶようにそう言って、腕に抱いていた相棒を下ろし、俺の手を掴んで勢い良く立ち上がる。
その手は、つい先ほどまで相棒を支えて為かいつもより熱い。
触れた部分から、その熱が伝わって、じんわりと汗を呼ぶ。
けれどはそんな事を気に留める様子は無く、早く!と繋いだ手を引いて俺を促す。

催促されるまま、腰を上げの歩幅に合わせて歩いて行けば
相棒も足に纏わりつくように小さな足を懸命に動かし、付いて来る。

一緒に来る気、満々だな。


「。こいつは?」


小さな体を踏まないように気をつけつつ、数歩先行くに問いかける。


「うん。お留守番。これからは2人きりでおデートです。」


彼女の口から出た、意外な言葉に俺と相棒の足が一瞬止まる。
今の、聞き間違い…じゃ、無いよな?


「ごめんね、チビちゃん。ちょっとだけ、行って来ます。
 さて、知念!乗れ!!」


チャリの所まで辿り着いたは、俺の手を離すとパっと素早く身を屈め
足元の相棒を撫ぜると、再度勢い良く立ち上がり
チャリに鍵が差してあるのを確認すると、スタンドを足払いで起こし
意気揚揚とサドルに跨った。

つーか…お前が漕ぐの?

思ってもなかった事態に戸惑う俺に焦れて、が叫ぶ。


「ほら、早く!日が暮れる!!」

「あ、あぁ。」


無駄に凛々しいに一抹の不安を覚えつつも、言われた通り
いつもは彼女が乗っている荷台に跨って座る。やはりサドルとは違う座り心地と景色。
あまり味わった事の無いそれに少しばかり感心していると


「初号機、いっきまーす!!」


の掛け声と共に、2人を乗せたチャリが動き出す。
掴まっててね!の言葉に従い、彼女の腰にゆるく腕を回し
俺はゆっくりと頬を撫ぜる風を感じ、ひっそりと瞳を閉じた。



本日、快晴。

空は澄んだ青。そこへ浮かぶ雲は真白。
その絶妙なコントラストを、太陽が光で更に彩り
目に痛いほどの、鮮やかな風景を創り出す。

そんな空の下、俺達は(赤いママ)チャリで2人きりのドライブ。
危なっかしいの運転に声を上げて笑いながら、取り敢えず海を目指して
チャリを走らせる。













05/0804

お題はこちらから、お借りしました。


 
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