明日から離れ離れですね。











きんぎょはなび











縁側に座って、花火で大はしゃぎしてる皆をぼんやりと
眺める。
暗闇に散る、色とりどりの火花。
響く、笑い声。

軽くお祭りみたいなこの状況。
確か今日もみっちり部活あった筈だけど…元気だね、君たち。

年寄りみたいだな、なんて思って
自嘲気味に笑って眼を伏せた。

視界が暗くなったから余計にクリアになった聴覚に
「待ってろよ、東京ー!!」とか「全国優勝!!」て声が届く。
そして、それと一緒に誰かの足音も。

「花火、やらないのか?」

頭上から声を掛けられて、視線をあげると
そこには知念が立っていた。

「やー、甲斐と平古場ちゃんの馬鹿騒ぎを見てるだけで
 お腹いっぱいッスよ。」

薄笑いでそう答えると、知念は「それもそうかもな。」と
同じく笑みを薄く浮かべてアタシの隣に腰を下ろした。

「明日から東京だね。」

「あぁ。」

「飛行機?」

「多分な。」

ポツリ、ポツリと言葉を交わす。
視線の先には、木手ちゃんに花火を向けて怒られてる甲斐と平古場の姿。
田仁志はそれを笑いを堪えながら見てる。
相変わらずだなぁ。
こいつらはいつもこんな感じ。
東京で妙な事仕出かさなきゃいいけど・・・。
嫌な不安が過ぎる。
頼むから沖縄の名を汚すことだけはヤメテね。

「・・・気をつけてね。」

色んな意味で。

「あぁ。」

返事とともに握られた手。

あぁ、もう。
そう云うさり気ないところが大好きですよ。

少し照れくさいけど、知念が自分からアタシに触れてくれたことが
(だって知念は凄くシャイなんだよ)
凄く嬉しい。だから

「ちょっと待ってろ。」

重ねられた手を握り返そうとしたけれど、同じタイミングで
知念は立ち上がり、花火をしている皆の所へ行ってしまった。

「……。」

空ぶった自分がやけにムナシイ。
ちくしょう。

向こうへ行った木手ちゃんと何言か言葉を交わすと
買出し袋から何かを取り出し、こっちへ帰ってきた。

「おかえり。」

「ただいま。、手ぇ出してみろ。」

言われて出した手に知念は何かを乗せる。
何だろう、分からないけど凄く軽いものなのは分かった。

「あ、」

渡されたのは、細くて頼りないこより。
金魚のような色鮮やかなそれは
誰もが見たことがあるだろう

「線香花火?」

「派手なヤツはあいつらが殆どやっちまったからな。」

そう言って知念はポケットから取り出したライターを近づけて
先に火を燈した。
途端に先端は赤く膨れて、パチパチと小さな光を散らした。
落とさないように慎重に持っていると、その膨らみは段々と大きくなって
少しばかり増した微かな光がぼんやりとアタシと知念と照らす。

「折角来たんだ。1本くらいやらないと損だろう。」

柔らかに、目を細める知念。
穏やかな表情に、アタシも自然と笑みが浮かぶ。

「ありがとう。」

礼を述べると、知念は少し恥ずかしそうにはにかんで
大きなその手でアタシの髪をグシャグシャと掻き混ぜた。
その衝撃で、ポタリと雫のように落ちてしまった線香花火。
淡い光だったけれど、無くなってしまうとやはり少し寂しい気がした。

「、もう1本やるか?」

知念の言葉に頷いて、もう一度火を燈す。

淡い光。
その向こうに居る知念は、アタシの手元をじっと見ている。

凄く平和で愛しい光景。

明日から遠くへ行ってしまうなんて嘘みたいだ。
離れるのは数日でしかないんだろうけど、やっぱり淋しいと思う。
そんなに離れたこと無いし・・・。
正直不安ですよ、はい。

「知念…。」

気付いたら、名前を呼んでいた。
声に反応して知念の視線が、花火からアタシに移り、どうした?と言うように
首を傾げる。
外見とは不似合いな可愛らしい仕草。
噴出しそうになったのを堪えて、なんでもないと首を振った。

その後、アタシ達は口を閉ざしたまま花火が落ちるのを待った。
今度は自然に重力に従った熱の雫。
儚くも潔く光を宿したまま消えるこの花火は、椿の花に似てるとふと思った。

「消えちゃった。」

「そうだな。」

一言だけ漏らして、絡まる視線。

じっと、お互いを見詰めあって
ゆっくりと顔を近づけてゆく。

肩に、知念の手が置かれて、アタシは少しだけ身を乗り出して
瞳を閉じようとしたら


「おーい!知念とがチューしよーとしてるぞー!!」


甲斐ーー!!
野暮にも程がある大声に邪魔されて慌てて飛びのいた。
あ、あんなに近かった知念が離れてゆく・・・。
そして、その代わりにワラワラと集まってくるテニス部員。
イヤラシイ笑みを浮かべた平古場が「知念クンたら破廉恥〜。」
なんて知念を冷やかしてる。

折角イイところだったのに・・・

「テメーのせいだ、甲斐!!」

馬に蹴られて死んじまえ!

アタシは勢いよく立ち上がり、暢気に笑ってる甲斐の首を捕捉して
一気に力いっぱい絞め上げた。

「げ!ちょ!!」


「知念との甘いヒトトキを返せー!!」















沖縄の方言が分からない・・・。
やっぱり知念が好きですよ。

05/0322


 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送