合宿中、マネージャーが倒れたとかで

代理として借り出された連休二日目。


アタクシはテニス部員のドリンクを作りながら

「チバリヨー。」とか言っちゃってます。















Blind Summer Fish

















学校から少しはなれた場所にある合宿施設。
テニス部は昨日から大会へ向けて、強化合宿を行っていたみたいです。
まぁ、アタシには関係なの無い話だったんだけど
今朝、木手ちゃんから電話があって

『マネージャーが倒れて、欠員状態なんです。
 今日だけでも良いので手伝ってくれませんか?』

とお声がけされてしまった。
断っても良かったんだけど、木手ちゃんとか知念くんとかには普段お世話に
なてるし、今日だけってことなんで引き受けることにした。

頼まれたドリンクの粉末を購入しつつチャリで合宿所まで向かう途中
この暑さじゃ、確かに倒れるわな、なんて思い
数時間後の自分の身を案じてみる。だって、すげー暑いよ。マジで。

どうにか目的地へ着いたので、とりあえず木手ちゃんの所へ行って
差し入れを渡し、するべき事を聞き、早速作業に入る。


「済みませんね、さん。」

「いいえー、どう致しまして。」


テスト前にノートとかでお世話になってるし、恩返しですよ。
笑ってそう言えば、木手ちゃんも済まなそうな表情を崩して今度は「有り難う御座います。」
と微笑んだ。


さて、お仕事頑張りますか!


買ってきたばかりのドリンク粉末をサラサラとボトルの中へ落としてゆく。
休憩時間まであと十分。
最初は楽な作業だと思っていたけど部員全員分ともなると、結構な重労働で
アタシは粉を零さないよう気をつけながらドリンクを作ってゆく。
その途中、ふと背後に人の気配を感じて振り返ろうとした瞬間


「ッ!」

「ぎゃ!!」


後ろから勢いよく抱きつかれて前に倒れそうになる。
咄嗟にテーブルに手を突いたから、転倒は免れたけれど頑張って零すまいと奮闘していた
粉末が少々ではあるが零れてしまった。

なんてこと!!


「ちょっと凛!あんた急に抱きつくのやめてよね!!」


こんなことをしてくるヤツは、顔を見なくたって分かる。十中八九、凛だ。
口調をきつくして羽交い絞めるように抱きついてる凛に言ってはみるものの


「お!よく俺だって分かったな!」


俺って、愛されてる!なんて
まったく見当違いに喜ばれて、ほお擦りをされる。ちょっと!!


「凛、仕事が出来ない。放して。」


邪魔だと言わんばかりに凛を肘で突付くと、凛は「おっと、これは失礼。」なんて
おどけて言って、態々アタシの耳に軽くキスを落としてから
一歩後ろに身を引いた。
セクハラ反対!


「永四郎がを呼ぶとか言ってたのは聞いてたけど、まさか本当に来るとはな。」


どう言う風の吹き回し?


「別に。木手ちゃんにはお世話になってるから、お礼も兼ねて来ただけだよ。」

「へぇ。」


ニヤニヤと笑う凛を無視して、作業を再開する。やばい、後五分ないじゃない!
急がなきゃ!
慌てて残りのボトルに粉を入れて、水を注ぐ。
丁度最後のボトルに水を入れ終わったのと同じタイミングで、木手ちゃんがホイッスルを鳴らし
休憩時間に突入する。
良かった、間に合った。

けれど、ほっと一息つく間も無く、疲れきった部員がドリンクを求めて
わらわらとこちらへ寄って来る。
各々に名前の書かれたボトルを渡していると、その中に知り合いの後輩を見つけて声をかけた。


「頑張ってるね、お疲れ。」

「あ、先輩!有り難う御座います!」


笑顔で受け取る後輩に、アタシも笑顔を返す。いい子だなぁ、この子。
するともう一人、知り合いの子がやってきて


「先輩、俺のドリンクありますか?」

「えー、ちょっと待っ・・・」


待って。そう言おうとしたら


ドンッ


横に居た凛が勢いよくテーブルを叩き


「テメェらガキじゃねえんだからよ、テメェのはテメェで探せ。」


地を這うような低い声で、こう言い放った。
・・・・・・何、急にキレてんの?
これにビビってしまった後輩くん達は、顔を真っ青にして「済みません!」と
頭を下げて適当なドリンクを引っつかみ逃げるように走って行ってしまった。


「凛、あんた今のはヒドイんじゃないの?」

「俺のに馴れ馴れしくすんのが悪い。」


うっわ、でた。凛のジャイアニズム。
ヤキモチをやいてくれるのは不謹慎だけど、凄く嬉しい。
でもね、今はちょっと勘弁願いたいです。部活中だし。
アタシはお手伝いをしに来たわけであって、後輩をビビらせに来たわけではないので。
そうは思っても、唇を尖らせ、拗ねた素振りを見せる凛をこのまま放っておくわけには
いかない。
仕方ないなぁ・・・。


「りーん、ほら機嫌直して。」


ペチペチと軽く頬を叩くと、凛は横目でこっちを見てくる。
その視線を緩い笑顔で受け止めて


「ほら、機嫌直す。」


ゆっくりと凛の滑らかな頬を撫ぜる。
すると凛はその手を掴んで、そっと指先に唇を寄せ小さく頷くと


「後でがキスしてくれるなら。」


言うと思った。
分かった、後でね。と返事をすると、凛はさっきまでの拗ね顔はどこへやら。
一気に満面の笑みを浮かべると、「約束。」と今度は手の甲に唇を落としてキザったらしく
口角を上げてみせた。
まったく・・・。でも、こんな所も可愛くて愛しいとすら思えてしまう。
恋をすると、本当に盲目になってしまう。


その後、すぐに練習は再開されて、
凛は皆と外周、アタシは部員の洗濯物を片付けたり、バタバタしていたものだから
アタシ達は夕食まで会うことは無かった。



「つっかれたー!あ、ちゃんもお疲れ〜!」

「あぁ、甲斐くん、知念くん。お疲れさま。」


夕方の練習も無事に終了して、あとは夕食と夜の自主トレだけ。
マネージャーとしての仕事もほぼ終わって、そろそろお暇しようかなと思っていた所
丁度良いタイミングで甲斐くんと知念くんに遭遇。
その数メートル後ろには木手ちゃんの姿も。
アタシが木手ちゃんに小走りで駆け寄り、お暇する旨を伝えると


「だぁめ!まだ帰さねぇよ?」


一体どこから湧いたのか。
後ろから肩を抱かれて振り返ると、そこには笑みを浮かべた凛のドアップ。


「なぁ、永四郎。も夕飯食って行って構わねえよな?」

「えぇ、構いませんよ。ご両親には了承を貰ってますから。」


え、いつの間に。
驚いている間にアタシはずるずると凛に食堂まで連れて行かれ
結局夕食をご馳走になってしまった。そうしている内に、時間は結構過ぎてしまって
もう本当にお暇しないとヤバイ時刻になってしまった。


「アタシ、自転車だし。そろそろ本当に帰るね。」


食後の歓談の最中だけれど、アタシは立ち上がり帰ろうとする。
けれど、またもやそれは凛によって阻まれる。


「うん、じゃあ危ないから。もう泊まっていけ?」

「そうだよ、ちゃん!危ないって!!」


部屋なら空いてるんだから、大丈夫だって!泊まっていきなよ!

いや、甲斐くん。そう云う問題じゃねーです。
木手ちゃん!部員の躾がなってないよ!!どうにかしてよ!!!
視線で助けを求めてみても、木手ちゃんは何処吹く風。こちらなんか微塵も気にした様子
も無く暢気に茶なんかすすってますよ!!
なら、それなら、知念くん!!

視線を逸らさないで下さい!ヘルプミー!!


「じゃあ、俺、を部屋に案内してくるわ。」

「ちょ!凛!!」

「平古場くん。一応言っておきますけど、明日も練習ですからね。」

「わぁーってる。じゃあな〜。」


上機嫌の凛に腕を引かれ、どんどん合宿所の奥へ入って行く。
途中何度も帰る騒ぎをしてみたけれど、聞き入れてもらえるわけもなく
そうこうしている内に辿り着いた角部屋に「いいから、いいから。」と押し込まれて
しまった。全然良くないよ!


「凛、アタシ帰るってば!」

「帰るって言われて帰すわけねぇだろ。」


最後まで足掻いてはみるけれど、やっぱりそれも無駄な抵抗で。
ドアが閉まると同時に、凛はアタシの肩を掴むとくるりと自分の方へ反転させ
真正面からアタシを抱き込んだ。


「まだ約束も果たしてもらってないし。」


忘れてました。そうだったね、約束してたね。


「……キスしたら帰してくれるの?」

「冗談。帰すわけないだろ。」


楽しそうな声色をしてはいるけれど、凛は本気だ。
髪の間に指を差し入れ、サラサラと梳きながらこめかみに口付けていた唇は
次第に瞼や鼻先、頬へとゆっくりと下へ落ちてきて
最後に唇に辿り着くかと思いきや、そうではなくて、頤にそっと口付けられる。

焦らすような、その行為。

大した事では無いはずなのに、アタシの心は酷く煽られて
あれだけ帰りたかったはずなのに、今はもう凛を拒めないでいる。

まずい。

凛しか見えなくなってる。


「ねぇ、。」

覗き込む瞳が、愛おし気に、ゆっくりと細められる。


キスして?


声には出さず、唇の動きだけでせがむ凛。
そんな目で…そんな顔をされて…拒めるわけないじゃない。

近付いてくる凛の顔。
その頬を包むように両手を添えて凛の唇に自分のそれを重ねる。
触れるだけのキスを何度か繰り返していると


「今度は俺から…。」


そう言って、さっきよりももっと強く、もっと深いキスを

凛から贈られた。
















このまま裏に続くんですかね?(聞くな)
難産でした、この話。こっぱずかしいし、何だコレ!!

05/0410


 
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