青春の摩天楼







夜も更けて、互いに好き勝手過ごす時間に終わりを告げ
そろそろヤマシイ流れになってもいーんじゃねーの?と、
兄貴の漫画を片手に深夜のお笑い番組を見ながらも、至って無表情な
(つまんねーなら見るなよ。暇なら俺の顔でも見とけ)にキスでもしようと思った矢先。
これから訪れるであろうコトを脳内で思い描いて、フとある事に気付く。

…ゴム、ねーや。

それは、俺としては全然オッケーなんだけど(むしろバッチコイ!!)絶対、
ヒャクパー、間違いなくは嫌がる。それでも無理強いしてコトを進めれば、
怒りの鉄槌と言う名のの黄金の右が顔面にダイブしてくるだろうことは火を見るより明らかで。
ダリィと思いながらも手にしていた雑誌を投げ、俺は重い腰を上げる。


「どっか行くの?」


善は急げと立ち上がり、ジーンズのバックポケットに財布を突っ込む俺に気付き、が顔を上げる。
テレビから移された視線に、内心ギクリとしながらも、平静を装って「あー、コンビニ?」とだけ答えた。
すると今度は「何か買うモンでもあるの?」とのご質問。

あるよ。ありますとも。
すげー大事なモンを買いに行っちゃう所なんですよ。裕次郎君は。

ギクリどころか冷や汗までかき始めた気がする俺の心臓。
俺一人にだけ走る妙な緊張に思わず顔の筋肉が引き攣りかけるも、そこはクールな裕次郎。
どこまでもナチュラルに頷いて見せる。(今なら紅天女も演じられる気がする)
すると、またまたさんからの質問が俺を襲い、一瞬だけ俺の心臓はマジ止まりした。
した。マジした。夢じゃない。


「何 買うの?」


それは特別アレな問い掛けではないけれど、下心ありまくりな俺からしたら
爆弾以外の何者でもない。薄々、もしかしたら聞かれるんじゃねーかなとは思っていたが
それに対する答えなんて用意している筈が無くて。
そんでもって、当然本音を漏らせるわけもなく(言ったら最後、ぜってー指一本触らせてくれない)
どーしたもんかと途方に暮れながらも、普段は余り使わない脳みそをフルスピードで働かせ、
どうにか言い逃れを考える。頑張って、俺のブレーン!!

それは時間にして、ほんの数秒(だと思う。)
考えも纏まらないまま開いた口から零れたのは。


「…コーヒーゼリー。」

買いにいく…。

だった。いまいち不安な返答だったけれど、はどうやら納得したらしく。
視線を俺からもう一度テレビへ移し「ふーん。」と一言だけ応えた。

セーフ!俺、セーフ!!

一気に出た安堵の溜息と歓喜の雄叫び。二つを胸の内で吐き出して、
こーなりゃ一刻も速くコンビニへ!と息巻くけれど、神様は俺に対してごこまでも残酷でしたジーザス。
テレビを見ていた筈のは、いつのまにか手にサイフを持ち、いつものようにどこか気だるげに
俺の横に立っていたんです。気付いたら。
口から飛び出そうとする「ヒィ…!」っつー何とも情けない悲鳴を飲み込んで、
横目での姿を確認。したらばっちし目があって


「アタシも小腹減ったから、一緒に行く。」


早く行くよ、とばかりに手を握られてしまった。
ば、おま!普段、そう言うことしねーくせに何で今そーいうコトすんだよ!!
焦る心とは裏腹に、絡められた指を解くコトなんて俺に出来る筈も無く。
ここは男らしく覚悟を決めて、繋いだ手を引いて俺達は部屋を後にした。
数時間ぶりに出た夜は、何か青くて。月がやたらとデカくて赤い。
二人分の足音と、短い影は「あー、青春してんなぁ。」と思わせるには充分で。
コンビニまでの短くない距離を、俺達は繋いだ手を外す事無く歩いた。


何も知らない彼女と夜中にコンドーム買いに行くって、妙に興奮すんのは俺だけですか。
そーですか。









甲斐くんはこんな怯えながらゴム買いにいかないよね。
もっと雄雄しく正直に行くよね。でも妄想。

06/1117



 
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