「なぁ、・・・何が欲しい?」


トーンの落とされた、聞き様によっては優しい声色で囁くように発せられた言葉が鼓膜を擽る。
今日は私の誕生日で、一年に一度しかない誕生日な訳で。
それを彼氏である裕次郎が祝ってくれると云うのは、とても嬉しい出来事だ。
その上、何かを贈ってきくれると言うのだから、これは恋する乙女からしたら
かなり幸せな事なんだと思う。

けど


「ほら、何が欲しいか。言ってみ?」


壁際に追い詰められた挙句、今にも押し倒されそうな、手を出されそうな際どい体勢で
ニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべてそんな事を言われても喜ぶ所か身の危険を感じてしまっているのですが
一体私はどうしたら良いのでしょうか。

とりあえず、今はプレゼントよりも助けを下さい。
ヘルペスミー!








Dear Mine








事の始まりは何だったか。
ああ、そうだ。隣のクラスの裕次郎が、アタシの誕生日の祝いの言葉を掛けに来てくれたのが
きっとコレの始まりだ。
満面の笑みと祝福の言葉、「おめでとう。」の一言の後、プレセントも用意してるのだと
ご機嫌な裕次郎に手を引かれ部室にやって来た。此処へ着くなり自分のロッカーを漁り出した彼を
壁に寄り掛かり、ジワジワと沸くように胸に広がる裕次郎が祝ってくれたと云う実感に浸りながら
待っていた、その時。


「・・・へ?」


不意に視界に影が差し、視線を上げると


「、捕まえた★」


つい5分ほど前に見せたものと同じ、満面の笑みの裕次郎がソコには居て
なんともご機嫌な言葉と共に、勢い良く抱き着いて来る。
自分で此処に連れてきたクセに、一体何が「捕まえた★」なのか。まぁ、そのツッコミは置いといて。
裕次郎の勢いに押され、強か壁に打ち付けた背が少しだけ痛い。
その痛みに一瞬だけ眉を潜め


「裕次郎、もう探し終わったの?」


そう問いかけると


「OK、OK!任しとけ!!」


とハイテンションな答えが返ってきて、その後間髪入れずにチュと唇を重ねて来た。
掠めるだけのキスの後、裕次郎はもう一度にっこりと笑い
今度は首を傾げてもう一度唇を重ねてくる。裕次郎の前髪が私の額に触れて、それを合図に静かに眼を閉じる。
学校で、しかも部室でキスするなんて不謹慎な!とか思ったけれど
ジャレる裕次郎が可愛かったんだから、仕方ない。普段なら許さない行為も
自分の誕生日と云う事で無意識に私も浮れていたんだろう。
掴まれた腕をそのままに、裕次郎に身を任せたのがいけなかったんだと、今になれば心の底から思います。


「・・・ん、」


何時もの様に永いキス。それも次第に息苦しくなってきて、それを伝えるべく身を捩るけれど
なかなか裕次郎の唇は離れない。
そこから行為が激しくなると云うことは無かったけれど
いつまでも続く口付けに、息苦しいから完全に酸欠状態になった私の意識は

や、もう本当勘弁して下さい!
マジでフルマラソン並にキツイから!!
硝子の心臓が張り裂けちゃうからー!!!

とキスに没頭するどころか、有らぬ方向へ飛んで行く。
だって、マジでキツかたんだよ。最近運動不足なのがいけなかったんでしょうか。

意識が自分に向いていないと云う事に気付いたのか
伏せていた眼を微かに開き、裕次郎が私を覗き込んでくる。
実は長い裕次郎の睫毛が彼の瞳に影を落として、その顔は何だか妙にエロかった。
色っぽいと云うより、エロかった(二回目)
開かれた瞳にはきっと苦しげな顔をした私が映っているんだろう。
一呼吸ほど置いて眼を細めて、裕次郎はやっと私から離れ
仕上げとばかりに舌先でチロリと唇を舐めて、永いキスを終わらせた。


「っサイアク・・・!!す、ごい苦しいんだけど。」

「ハハッ、お前いつもそう言うよな。いい加減慣れろって。」


肩を上下させて必死に酸素を取り込もうと呼吸しながら近すぎる距離の裕次郎を睨めつけるけれど
効果は無し。それどころか得意げな表情で余裕なセリフを言い返してくる。ちくしょーめ。
自分とは違い、あんだけ酸欠になるような行為をした後でも
息一つ乱さずに、鼻を摺り寄せ甘えた行動を見せる裕次郎。
さっきのキスをしてる時みたいなオスの顔と、こうした子供みたいな一面。
この二つの表情のギャップが愛しいけれど恐ろしいと、今まで何度思った事だろう。
一度ハマってしまうと抜け出せなくて、どうしようも無いんだ、この男は。
まぁ、そこが好きなんだけどね。心移りするつもりは無いし。

本人には言わないけど。


「それより、裕次郎。何かくれるんじゃなかったの?」


適度に息切れも治まり、また変なことでもされたらたまらないと(だってもうすぐ昼休み終わる気がする)
話題を元に戻そうと話を振る。すると裕次郎は、待ってましたとばかりに
唇の端を吊り上げて笑い、両手首を掴む力をグッと込めた。

え?何??て言うか、そろそろ手を離そうよ。

不穏な笑みに思わず引き攣る私の表情。良からぬ予感が脳裏を過ぎる。
頼むから妙な事はしないでくれと胸中で祈るけれど
そんな私の望みに反して、裕次郎は歪ませた唇をゆっくりと開く。


「うん、今日はの誕生日だし。俺の可愛い彼女の誕生日だし、ちゃんとプレゼントも用意してたんだけど、」
 やっぱ辞めた。」

「は・・・?」

「辞めたっつーか、俺ってばのことスゲー好きだから
 もう一つプレゼント増やすことにしたわ。」

「そ、れは嬉しい申し出だけど・・・。」

「ねぇ、は俺のこと好き?」

「え、あ、うん。好きですが。」


会話の流れが掴みきれず、どうしても歯切れの悪い答えしか返せない。
それでも裕次郎は私の返事に満足したようで、嬉しげに眼を細めると再度ゆっくりと顔を更に近づけて


「じゃあ・・・、」


微妙に唇が触れる距離で、低くでもはっきりと


「もう一つ、プレゼント。
 の好きな俺をあげる。髪でも、眼でも、指でも心臓でも。」


手首を掴んだ裕次郎の手が肌を滑って、指先が掌を辿って、指の股に指し込まれた骨の太い指が
強く私の手を握る。
キスの先の行為を匂わせる動きに、冷たい汗が背をツっと流れ落ちた。


「が欲しいって言ったところは、死んでものモノ。
 俺はモノじゃ無いけど、所有権をあげる。

 ねぇ、。

 は俺の何が欲しい?」


狂気染みた裕次郎の言葉。
それでも不覚にも私の心は、その言葉に悦んでドクリと跳ねる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
一種のプロポーズのようなそれに動揺しまくってしまって返事が巧く返せない。
ちょっと神様、仏様、木手様(あ、木手くんは関係無いや)
一体ワタクシはどう云った言葉を返せば良いのでしょう。

人生何度目かのバースデーに、人生初の言葉を前に固まる私。

取り敢えず助けを求めるべきなのか、あるいはきっちり反応を返すべきなのか。
そして展開は冒頭に至る。

ヘルペスミー。
そしてハッピーバースデー自分!!(こんな展開は予想してなかったぜ!!)














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綾方さま、お誕生日おめでとうございます!!
相互記念に何か夢文をと考えているうちに、綾方さまの誕生日が近いと知り
こんなものを書いてしまいました。すみまっせーん!!
裕次郎が何だか変な子ですみません。
これでも力いっぱい祝ってます!!
本当におめでとうございます!好きです!!
綾方さまに、これからも幸あれ!変なテンションで済みません!




紫月 拝

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