用事があるとかで早引けして帰った、我等が主将。
3バカのストッパーこと木手永四郎を抜かした四つの影が帰路に伸びて
俺、平古場凛の心を何故か不安に揺らめかせた。

どうか何事もなく平和に家へ帰れますように。








デコボコ★フレンズ 〜52+34+16〜







「お腹空いたー!!」

背伸びしながら突如、叫ぶ。それに続き「俺も、俺も!」と便乗して叫ぶのは甲斐。
腹が減るのは結構だけどさ、いちいち大声出すなよ。
その数歩後ろでは靴紐を直していた知念が、どうやら紐を結び終えたらしく
おもむろに立ち上がると「俺も減った…何か買ってくか?」と前を行くバカ2人に追いつく様、歩みを速める。

「わーい、それ賛成!」

「俺、肉まん食いたい!!買って帰ろーぜ!!」

知念の発言にマジで諸手を上げながら大はしゃぎで賛成する甲斐との
小学生でもしないであろう喜び方に、思わず引いた俺は悪くないと思う。

うん、悪くない。

そう短い自己暗示をかけている間に、ウカレポンチなバカ3人は何時の間にか
知念を挟んで横並び、手を繋いだ挙句、恥ずかしい事にスキップを始めていた。
夕陽に照らされて軽快に動く、アンバランスな3人の影。

無駄に長く伸びたソレを見て何やら哀しくなった俺は悪くない。
うん、悪くない。(二回目)


「つーか、お前等金無ぇって騒いでなかったか?」


買い食いなんて出来る余裕あんの?
現実逃避を終わらせ、我に返った俺は口に含んだチュッパを舌で転がしつつ、
嬉々と相変わらずスキップを続けている3バカにツッコミを入れてみる。
するとピタリと3人分の足音は止まり、示し合わせたかのように3人揃って
その場にしゃがみ込むと知念はJean Paul Gaultierのサイフを、は黒猫型の小銭入れを手に
甲斐は尻ポケットに手を突っ込み、各々の所持金を取り出し始める。

どうやら所持金チェックが始まったらしいです。

丸まった三つの背中越しに届く、
チャラチャラとした音が、やけに哀しい。紙幣の音がしないのが、やけに哀しい。
いや、哀しいのは今が冬なせいだ。あいつ等のせいじゃない。


「…52円。」

「あ、寛くん凄いね。アタシ、34円。」

「俺…16円。」

「足すと幾ら?結構いくんじゃない?」


52+34+16=102です、さん。
あんた、やけにノホホンとしてますけど、全然結構な金額になってません。


「肉まんて幾らだっけか?」

「105円。」

「あー、じゃあ3円足りないねぇ。」


しょぼーん。そんな音が聞こえてきそうな程に落胆したらしい3人の背中が哀しい。
なぁ、お袋。冬ってこんなに寂しい季節だったかな?
残り少なくなったチュッパを噛み砕き、溜息を吐くと俺はしょぼくれた3人へと近付き
「奢ってやるから。早く帰んぞ。」甲斐と知念に蹴りを入れ(は女だから免除)慣れた道を
歩き始める。ローファーの音を響かせて数歩行くと、背後から肩を叩かれ


「負ぶってやる。」


無表情なくせに矢鱈と瞳を輝かせた知念にそう言われ、頬の筋肉を引き攣らせた。
その後ろに居た甲斐とは「やったー!平古場くん神様ー!」「崇め奉れー!!」と
どこから取り出したのかカスタネットを打ち鳴らし、踊り始めた。迷惑極まりない。

その後、盛りあがりに盛りあがった3人に騎馬戦のように馬を作られコンビニへと向うも
(俺の抵抗は無に等しかった)途中で巡回中の警察に見付かり、小言を聞かされる羽目になった。


もう、馬鹿3人に恩は売らないと心に決めた15の冬。










肉まんは冬のめーぶつし!!

07/0318


 
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